一度の不貞行為でも慰謝料が認められるか

文責:所長 弁護士 石田俊太郎

最終更新日:2024年12月27日

1 一度の不貞行為でも不倫慰謝料が発生することがある

 配偶者とその不倫相手の間における不貞行為が一度しかなかった場合でも、法律上は不倫慰謝料が発生します。

 ただし、実務においては、不貞行為の回数が多い場合と比べると慰謝料の金額が低くなる、または慰謝料の請求ができなくなる可能性もあります。

 これには、不貞慰謝料が発生する仕組みが関係しています。

 以下、不貞慰謝料の請求の流れと、一度しか不貞行為がない場合に予想されることについて詳しく説明します。

2 不貞慰謝料の請求の流れ

 不貞慰謝料が発生するための法的な要件はいくつかあります。

 まずは、不貞行為、すなわち配偶者と不倫相手との間で性的関係(性行為またはそれに類する行為)が存在していることが必要です。

 実務においては、不貞行為の存在を客観的に証明できる証拠が必要となります。

 次に、不貞慰謝料は、不貞行為によって平穏な夫婦生活を送るという権利を侵害された場合に生じます。

 この侵害の程度によって、慰謝料はある程度変わります。

 また、配偶者の不倫相手においては、故意または過失(不倫をした配偶者が既婚者であったことを知っていたか、注意を払えば知り得たという状態)がなければ、不貞慰謝料の支払い義務が発生しません。

3 一度しか不貞行為がない場合に予想されること

 まず、不貞行為の存在を裏付ける客観的な証拠が取得できないということが考えられます。

 不貞行為が一度しかなかった場合、例えば配偶者とその不倫相手がホテルに入る場面などの写真等が取得できないということがあります。

 不貞行為の存在を客観的に証明できないと、基本的には不貞慰謝料の請求は困難になります。

 次に、不貞行為が一度きりの場合、いわゆるワンナイトということもあり、お互いのことをよく知らないということもあり得ます。

 不倫相手としては、不倫をした配偶者が既婚者であることを本当に知らず、故意または過失がないということも考えられます。

 また、不倫慰謝料は不貞行為を行っていた期間が長い場合や、不貞行為の回数が多いほど高額になる傾向にあります。

 そのため、不貞行為が一度であった場合には、慰謝料が低くなる可能性があります。

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